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第16号 「世界難民の日」とアフリカ

有馬 みき(東京大学 難民移民ドキュメンテーションセンター 特任研究員)

6 月 20 日 は「 世 界 難 民 の 日 」(WorldRefugee Day)です。この日は世界中で、難民に関する多彩なイベントが行われます。
難民キャンプで、難民自身の手によるものから先進国で、難民について知ってもらい支援を募るためのものまで、開催地や主催者も様々です。
過去、日本で開催されたイベントを挙げてみると、たとえば 2011 年には、この日に合わせて東京タワーが国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)を含む国連のカラーである青色にライトアップされました。
2012 年には、学生だからこそできる難民支援を目指す J-FUN ユースにより難民ファッションショーが行われました。
ほかにも、例年講演会や勉強会などが各地で行われています。

 世界難民の日は、2000 年 12 月 4 日、国連総会決議により制定されました。
その目的は、難民の保護と援助に対する世界的な関心を高め、UNHCR をはじめとする国連機関やNGO(非政府組織)による活動に理解と支援を深める日にすることです。
では、なぜ 6月 20 日なのでしょうか。それは、もともとこの日が OAU(アフリカ統一機構)難民条約の発効を記念する「アフリカ難民の日」だったからです。そこで、今回はアフリカについて考えてみましょう。

 実は本年 6 月は、まさにアフリカについて学ぶチャンスなのです。
なぜなら、アフリカの開発をテーマとした国際会議である「アフリカ開発会議」(TICAD)が、横浜市で開催されるからです。
(6 月 1 日から 3 日までこの国際会議は日本政府の主導によるもので、首脳級会合は5年に1度、日本で開催されています。
「平和の定着」、「人間中心の開発」、「経済成長を通じた貧困の削減」を3本の柱に、また、アフリカの「オーナーシップ自助努力)」と国際社会の「パートナーシップ(協調)」を2つの基本原則として、アフリカの開発を推進する重要な取り組みです。
今回は第5回目の開催(TICAD V と称されます)で、アフリカ 54 カ国のうち約 40 カ国の大統領や首相が来日する予定であり、アフリカ開発に関する世界最大級の国際フォーラムとなっています。
各国の首脳が出席する本会議に加え、一般の方も参加可能なイベントが 50 以上も開催される予定です(詳細は/外務省ウェブページ http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/ticad/tc5/ でご確認ください)。
アフリカ開発のためにできることは、政府間の資金援助だけではありません。
アフリカにおける青年海外協力隊の第一号となる隊員が日本からケニアに派遣されたのは 1966年のことです。それから約半世紀の間にアフリカ全土で活動してきた日本の青年海外協力隊及びシニアボランティアの数は、既に 1万 4 千人を超えるそうです。
みなさんが勉強している法律分野においても、紛争影響国における国づくりを支援する活動の一環としての法整備支援へのニーズが高まっており、専門知識を活かして国際協力ができる。人材が求められています

 レアメタルなどの豊富な天然資源を有していることでダイナミックに急成長しているアフリカですが、その一方で、紛争や内戦によっておびただしい数の難民が依然として厳しい生活を余儀なくされているのも事実です。
UNHCR によると、2011 年末時点でアフリカには 260 万人以上の難民がいます。
これは、アジア太平洋地域についで 2番目に多い数です。
この全体数に比べればほんの一握りではありますが、日本にもアフリカから難民が来ています。
法務省により発表された過去 3 年間の難民認定申請者の国籍、別内訳(平成 24 年)をみると、ナイジェリア、ガーナ、カメルーン、ウガンダ、エチオピアコンゴといった国が挙げられており、数は少ないもののアフリカ出身者も日本で難民として認定されています。
これまで少なかったアフリカ諸国からの難民申請者は急増しており、最低限の生活が保障されずに日本で。ホームレスになってしまう人もいます。
『(愛(Love)の反対は無関心(Indifference』」というマザー・テレサの言葉があります。
「日本にいればアフリカの難民問題は遠いかもしれない。でも、関心を持ってください今この地球の上で起きていることについて知ることが、未来の地球のあるべき姿を想像する第一歩になると思うのです。」これはUNHCR ナイロビ事務所の中柴春乃さんの言葉です
今年の 6 月 20 日、みなさんはどのように過ごされるのでしょうか。勉強で疲れたときのちょっとした時間でも構いません。ぜひ今この地球の上で起きていること」について思いを巡らせてみてください。


 
伊藤塾塾便り214号/HUMAN SECURITYニュース(第16号 2013年6月発行)より掲載